岬さんの謎
文字数 464文字
ヨウコだった。今朝、僕に姿を変えて、今はうどん屋でバイトしているはずの妖狐だった。それなのに、なぜか遠く離れた山奥で、今朝着ていった僕の服を着て、きょとんとした顔で突っ立っている。
とりあえず、Tシャツとハーフパンツという平凡な格好だったが、思わず目をそらしたのは、服がぶかぶかで、襟元から薄い胸が見えそうだったからだ。
岬さんがそう呼んだのには驚いたが、よく考えれば、僕がコンビニをクビになったとき、一度会っていたのだった。
あのときは、レジで俺におごらせるために姿を見せていた。でも、今は岬さんの前だ。誓いを守る気があるなら、その眼の前をうろうろしたりはしないだろう。
僕からは聞くに聞けないことをヨウコが聞いてくれたが、常識で言ったら聞くべきじゃないことに変わりはない。
妖狐の本性に関わることだけに、それ以上は喋らせるわけにもいかなかった。黙らせようと思ってツッコんだが、ヨウコもそこは心得たものだった。