ライバル、消滅
文字数 506文字
僕も笑ってみせる。別に責める気はない。
何だか、勇気が湧いてきた。
これは本当だ。田舎での人生に見切りをつけるまでは、山や川を駆けまわって遊んだものだ。神社を覆う木陰を渡る風の音までは知らなかったが。
だが、向坂も余裕たっぷりだった。
気の利いたことを言ったつもりだったけど、高校生の浅知恵など、留年抜きで大学に6年間いた学生には何ほどのこともないようだった。
何だかカチンと来た。天から地上の僕を見下ろしているような物言いだったからだ。
岬さんの様子をうかがうと、僕の背中に隠れている。
これ以上、怯えさせちゃいけない。僕は意を決して、向坂に向き直った。
そう言うまでもなく、いつの間にかいなくなっていた。
代わりに、そこにいたのは……。