冬の夜道は寒い道
文字数 459文字
校則で、バイトが終わったら午後9時には帰宅しなければならないことになっている。その日は客が多く、なかなか仕事が上がらなかった僕は、レジの前に誰もいなくなった一瞬を狙って、タイムカードを突くのもそこそこに店を出た。
別に学校に帰宅の報告をする義務があるわけじゃないが、万が一、バレたらバイトはできなくなる。そうなれば、僕に生活の手段はなくなるのだ。
たった一つを除いて。
図書館を出る時に見たやつだ。
去年の秋、家を後にする僕の背中に親父が投げつけた一言は、今でも心臓まで突き刺さっている。
僕が小学生になった頃、日本の憲法が変わったらしい。道徳の授業で、伝統がどうとか、国やふるさとを愛する気持ちがどうとか習ったけど、よく覚えていない。