狐ネットワークの活躍?

文字数 414文字

あいつ、なかなか手強くてさ。
あいつ……?
 ヨウコは答えないで、一方的に喋りつづける。もっとも僕だって、正体をバラしかかったことを責めるつもりはもうない。何となく、誰のことかは見当がついていた。
……それでも車でこの辺うろうろしてたんだけど。

 話の前後を結ぶ事情を察するに、岬を追ってきた向坂を化かして、追い返そうとしていたのだろう。それが失敗したのはヨウコが未熟だったのか、それとも岬を追い求める向坂が執念深かったのか。

 それにしては、僕が目をそらしている間に姿を消した理由が分からない。

急にどうしたんだろ。
 口を尖らせて考え込む様子からしても、とぼけているようには見えない。どうやら、ヨウコのしわざでもないようだった。
お前の仲間がやったんじゃないの?
そうかも。
 狐たちのネットワークがどういうものかはよく知らないが、そのくらいのことができる者はいるようだった。

 そんなわけで謎は何となく解けたが、問題は何ひとつ解決してはいない。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色