諦めと、ささやかな謎

文字数 315文字

じゃ、しょうがないな。
 絶望で全身から力が抜けたが、その分、落ち着いた。
(冷静に考えてみれば、別に校則や法律を犯したわけじゃない。罰を受けたり、学校をやめなくちゃならなくなったり……それはないだろう)
 そこまで結論が出ると、気持ちがすっきりする。
ごめんね。
気をつけろよ。

 まかり間違えば人生に関わるような大事件だった。

 だが、つまらない失敗をたしなめるかのような言葉を交わしながら、僕たちは実家の灯を目指して夜道を歩いた。

(じゃあ、やることは1つか)
 腹が座ったところで、思い当たった不思議も1つだけあった。
(バイトをクビになったって言ったヨウコの姿は、オフクロには見えなかった。それなのに、声が岬さんに聞こえたということは……)
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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