回る水車の罠
文字数 444文字
バイト先の看板でもある、あの水車。
あれだって、ヨウコは逆回転させたのだ。しかも、輪っかそのものじゃなくて、モーターで循環させてある水を逆流させて……。
何でそんな真似をしたかというと、僕と岬さんの出会いをセッティングするためだ。
今のバイトが決まって休日のシフトに出たとき、ついてきたヨウコは岬さんが店に来たのに気付いたらしい。
意味深に、こう言ったものだ。
たちまち、店は大騒ぎになった。僕は厨房で皿洗いをしていたので、岬さんの来店に気付くどころか、何が起こったのかということさえ見当がつかなかったのだ。
水車が逆回転を始めたのだ。
ヨウコが僕を店先に連れ出すと、水車がショルダーバッグを引っかけて、てっぺんまで持ち上げるところだった。放っておくと、水があふれ出している水槽に落ちる。