命を懸けた願い
文字数 507文字
たくさんの車両が行き来しているのは救護や死傷者の搬送のためなのに、僕自身はそこへ近づくこともできないのだ。
それでも、僕は叫び続けた。
普段ならこっ恥ずかしくて絶対に言えないような言葉を、僕はわめき散らして歩いた。そうしている間は、足の痛みを忘れることができた。全ての絶望を振り払うことができた。ありがたいことには、ひっきりなしに交差する軍の大型車両の轟音が、僕の声をかき消してくれた。
無情にも、どこまでも細長く伸びた僕の影は薄れていく。目の前がぼんやりと暗くなっていくのは、疲れのせいだけじゃない。
僕の意識は、命と共に消えてなくなる。
僕は激痛を通り越して感覚のなくなった足の踵を、くるりと返した。夕日は遠くの山の彼方に消えてしまったが、空はまだ明るい。まだ、沈んではいないはずだ。
だから、僕はそれを呼んだ。