僕とヨウコの連携トリック
文字数 475文字
これが、その大学院生だ。でも、僕に兄弟はいないし、この向坂に電話をかけられるいわれもない。
返事はしないで、ヨウコの顔を横目で眺めた。
にやりと笑って親指を立ててみせた。 察するに、これが妖狐の術なのだろう。
他の狐たちと何をどうやったのかは見当もつかないが、今度は水どころではなく、電波の流れまでも操ってみせたということだ。つまり、携帯電話の混線を起こしたのだ。
とっさの返答は、ヨウコにしてみれば正解だったらしい。その笑顔が、何だか眩しかった。
調子に乗って、由良家の弟になりすます。セーラー服姿の妖狐は、腹を抱えて笑っていた。
ひいひいと引きつった笑いの底で、ヨウコは絞り出すような声でツッコミを入れてきた。
さすがに向坂も不審に思ったらしいが、そんなことは想定の範囲内だ。