その後のささやかな経過報告

文字数 434文字

 その謎は、ずっと後になって解けた。
岬……さん。僕と……。
岬でいいわ、才くん。

 高校を卒業して軍での年季奉公を終えるまで、岬さんは戦争に送られないか心配しながらも、独力で学業を続けて待っていてくれた。改めて就職した僕は、夜間の大学に入った。

 お互い社会人となった僕たちは、やがて、お互い結婚を誓い合う関係になる。

話は聞いてるよ……おめでとう。
 僕は彼女のルーツとなった杵築家のある土地を訪ねて、そこに新居を定めることにした。杵築家の人たちは快く僕たちを迎えてくれたし、地元の人たちも見ず知らずの僕たちを、まるで子供時代から知っていたかのように受け入れてくれた。
はじめまして……浅賀才です。
由良……あ、もうすぐ、浅賀岬、です。
 結婚や引っ越しを控えて大わらわの毎日となったが、そんな中でも僕が岬さんと真っ先にやったのは、その土地の氏神を訪ねることだった。
 知り合うきっかけとなったあの事件で、土地の神社や祠といったものがどれだけ人を強く結びつけているかを知ったからだ。
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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