僕は彼女に追いつけない
文字数 422文字
どんな目で見られているか、気になった。でも、ここまで言った以上、岬さんから目をそらすわけにはいかない。
実家よりも更に山奥から下りてきたバスのヘッドライトが2つ、すぐ目の前に迫っていた。僕たちのすぐ目の前で乗降口が開く。岬さんが先に乗り込んだ。
僕の荷物は全部実家に置いてきてしまったけど、そんなこと構わない。後を追って、バスのステップに足をかける。でも、岬さんはそこから動かなかった。
その言葉で、僕の足は止まった。
実際には休めなかった。ここに来られたのは、身代わりになったヨウコのおかげなのだ。
胸がズキンと痛んで、目の前でバスのドアが閉まる。
車内のぼんやりした照明を背にしてはいたが、岬さんが窓から僕をじっと見降ろしているのが分かる。
苦しい息の中で、バスのテールランプが遠ざかっていった。