ロリコン疑惑はお互い様

文字数 510文字

 ヨウコの首には、不格好までに大きな絵馬が下がっている。だが、願い事や絵はない。

 それがあるべき場所には、必要な情報が次から次へと現れては消えるのだ。

(どういう仕組みになってんだ?)

 そこは考えるだけ野暮というものだろう。

 このおかげで、岬が休日に集めてきた資料では分からないことがあっても、どこへ行ったら調べられるのか、僕はさも自分の知識であるかのように助言することができたのである。

 あまり格好いいことではないが。

ガセばっかだったけどな。
そんなことないよ。
あ、いや、そういう意味じゃなくて。
 それでも何とか、由良家の先祖が宮司の家系だったらしいことまでは分かっている。
何よ、もう助けてやんない。

 ヨウコはぷいとむくれたが、実際、最初のうちは岬にムダ足を踏ませたりもしたのだ。

最近はそんなことがないように、バイトのシフトも外して自分で現地に足を運んだりもしているのだ。
 もちろん、そのときはヨウコも一緒だ。もし、ヨウコの姿を知っている人に見られたら、明らかに中学生とデートしていると誤解されただろう。

(当然の抗議じゃないか)
 もっとも同じことは、姿の見える岬さんとフィールドワークやってる件の大学院生にも言えるのだが。
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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