親父の怒り
文字数 407文字
ムキになって黙らせたが、本当に諦めるつもりだったのだ。そのためには、ちょっと冷却期間が必要だったというだけのことだ。
それを許さなかったのは、親父だった。
玄関に立った僕の顔を見るなり、怒鳴りつけ、脅しつけられたわけだが、そうなれば、高校中退で田舎へ帰り、安い給料で地元に勤めてくすぶっているしかない。
たかが女の子一人のために、人生を棒に振るのはゴメンだった。
オフクロがなだめてくれて、僕は家の敷居をまたぐことなく下宿へ戻るだけで済んだ。でも、家よりも更に山奥から来たバスに乗り込んだ僕の心はやっぱり晴れなかった。
ほかに誰も乗らないまま発車した後には、夕暮れ時の懐かしい山々の影を眺めて思った。
その時だった。バスが急にバックを始めたのは。