ヨウコの尻尾で危機一髪
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ヨウコのハーフパンツがずれかかっている。狐色の尻尾の先が、ちらっと見えていた。
ヨウコの手を引いて、慌てて玄関を飛び出した。
親父の怒鳴り声は聞こえてこなかった。代わりに耳の奥で引っかかったのは、オフクロとのこんな会話だ。
とりあえず安心できたのは、お互い、何かトボけているみたいに聞こえたことだ。
バス停まで走って行くと、もうすっかり暗くなっていた。バスが来るまでは、まだ30分ほどある。
ヨウコが済まなそうにしょげているのは、何となく分かった。
たぶん、自分たちが玄関で見聞したものは、親父もオフクロも一生、口にはしないだろう。それだけで充分だ。
それでもヨウコは、自分の失態を相当、気にしているみたいだった。