大逆転の謎

文字数 420文字

 どうしてこんなことになったのか。

 簡単にいうと、時間が逆転したからだ。こんなことができるのは、この世に多分、1人……いや、1匹しかいない。

……大丈夫、お兄ちゃん。

 妖狐のヨウコだ。

 僕が山の向こうの夕日に向かって叫んだ時のことである。

戻って、こい! 戻って、こい! 僕が、岬さんの元にたどりつくまで!
 信じられないことが起こった。背中で薄らいで消えるはずの僕の影が、目の前にくっきりと現れたのだ。
……?
 振り向いてみると、朝日が昇っている。そして、立ち上っていた煙は消えていた。スマホを確かめてみると、休校を告げるメールはそのままだ。でも、Webニュースを検索してみると……。
深夜の世界首脳会談、危機回避へ
ミサイル発射断念、その思惑
 どこもかしこも危機回避の話題でもちきりだった。そのままといえば……。
……っ!
 足の痛みは治まっていなかった。捻挫した足はどうにもならず、僕は記念公園へと半歩ずつ歩かなくてはならなかったのだった。
あれ……?
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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