実家のことは口にしたくない
文字数 508文字
次男坊が出征するのは分かる。長男は家を継がなければならなかったからだ。でも、次男坊が家を継ぐというからには、何か尋常じゃない事情があったはずだ。
僕に睨まれて、ヨウコは沈黙する。
当時の世界的なインフルエンザのことだ。感染したスペインの王族が次々に死去したので、この名前がついたらしい。
性懲りもなく口を挟んで睨まれて、ヨウコはまた小さくなった。
この上、岬さんの口からも「実家」というキーワードが出るのがイヤで、僕は強引に話を引き取ったが、それは結局、ムダに終わった。
本当は、現地(あくまでも実家とは言わない)に行くまで、よく知らないことは口にしたくなかったのだが、言い出したのは僕なんだから仕方がない。