お坊さんと狐の昔話
文字数 449文字
僕の実家では、第一次世界大戦が終わる頃まで狐が人を化かしていた。
雨がしとしと降っていた。
蛇の目傘を差してお土産を手に、ふらふらと闇夜の家路を急いでいたが、ふと気になったことがある。
次第に、恐ろしくなってきた。
傘を投げ出し、お土産を放り出し、草履も脱いで駆け出すと、半狂乱になって走りだした。
ようやくお寺にたどりつくと、布団に潜りこんで寝てしまった。
それでも夜が明けると、こっそり道を逆にたどってみた。
蛇の目傘はあるにはあったが、高い木のてっぺんからぶら下げられていた。
草履は木の根元に揃えられ、お土産はその傍に、油揚げだけを食い散らかされて放り出されていたという。