水車男からの電話
文字数 406文字
僕のスマホに電話がかかってきたのは、そのときだった。田舎者にそれほど人づきあいがあるわけでもなく、連絡先は限られている。因みに、岬さんの連絡先はメールアドレスしか知らない。電話番号は、まだハードルが高かった。
表示された番号に、心当たりはない。
ヨウコはまた、不敵に笑った。首をかしげながら電話に出てみると、知らない男の声がした。
まだ若い。はきはきとした、しかし、柔らかい声だ。
間違い電話かと思ったが、そう告げる前に、頭の中で閃いた名前があった。
たしか、岬さんが頼りにしている(絶対に、つきあってるなんて認めたくない)大学院生は、向坂って名前だったはずだ。
ヨウコが、可愛くウインクしてみせた。背筋に寒いものが走る。
この妖狐が逆転させるのは、機械の歯車だけではない。