いちばん助けてもらいたくない相手と
文字数 460文字
惨めなことに、僕をそんな言葉でいたわるのは、よりにもよって向坂だった。高そうな革張り内装の車で、足を挫いた僕を記念公園まで送ってくれるというのだ。
神社で会ったときと同じ、丁寧な口調だった。だが、一人称が「俺」というのはちょっと意外な気がした。
言えるわけがない。足を挫いた事情と同じくらい、それは言えなかった。
僕はトラックのシートに何とか飛びつくことができた。足下も機械みたいに固いものじゃなかったから、落ちた衝撃で怪我をすることはなかった。むしろ、柔らかすぎたくらいだ。たぶん、ウレタンか何かが積んであったんだろう。
落ちたショックで弾き飛ばされ、僕は固い歩道の上に叩きつけられた。飛び降りたときはまだ着地の姿勢を取ろうとすることができたけど、こんな不意打ちを食らってはどうにもならない。足の捻挫で済んでよかったのだ。