命あっての……
文字数 479文字
だが、こういうことも言える。
そこまで考えて、僕は高架橋の端っこに足を掛けたが、そこではたと踏み止まった。
怪我をしない、ということではない。瀕死の重傷を負っても、生きていることには違いないのだ。たとえ命があっても、記念公園まで、そして岬さんのもとまでたどり着けなければ意味がない。
太陽の光を感じる方向に振り向いてみた。公道を挟む山の端に、そろそろ近づき始めている。日没までは時間があるけど、徒歩で移動したことがないから、よく知らない迂回ルートを通って間に合う保証はない。
高架橋の下を、あの何とも言えない暗い色をした軍の大型トラックが通過する。僕はその荷台にトランポリンのように掛かったシートを大きく息を吸い込んで見据えると、道の端にあるフェンスを乗り越え、思いっきり両腕を振って飛び降りた。