過去とのシンクロ
文字数 421文字
ヨウコの不満気な声に、ハッと我に返ると、また僕を見上げる円らな瞳がある。あの時も、同じ姿勢で、同じことを言われた。
キッパリ言い切って、空になった丼を取り上げる。ヨウコは面白くなさそうな顔つきで、僕の膝から飛び降りた。僕は流しで丼を洗うと、レジの仕事に戻る。
あの時も、そうすればよかったのかもしれない。
運転手がアナウンスで大騒ぎして安否を確かめる中、僕ができることは逃げようとしてじたばたすることだけだった。
ヨウコが泣きながら言うことも、あの時と同じだ。半年前はさすがに騙されて、そのまま茫然とするしかなかったが、コイツがどんな娘か分かってからは、そうはいかない。
食うべき油揚げがなければ、この店で妖狐のヨウコには何一つとしてすることがない。