両手に花のハーレムが
文字数 569文字
ヨウコは布団の中から言ったけど、それはもちろん、メールの件じゃない。電話のほうだ。でも、僕としては両手に花と言ってよかった。
それまでは、実家の上げ膳据え膳でゆったり過ごせばいい。どうせ、バイトはクビだ。今日1日は、ヨウコとのんびり過ごせる。
そんな妄想を断ち切るかのようにお、僕の頭にTシャツとハーフパンツが降ってきた。ヨウコの仕業だ。
振り向こうとして、はたと気付いた。
囁く声に、僕はじたばたとのたうち回った。替えの服なんか、オフクロがどこにしまったか分からない。
目を固く閉じて叫んでいると、そのオフクロが襖の向こうから眠たそうに言った。
襖を小さく開けて、スマホを差し出す。もう片方の手を振って、昨日の服を着ろとヨウコに促した。
ヨウコとのやり取りする僕の声が聞こえたのか、オフクロはスマホを返しながら言った。