秘められた想い、そして……。
文字数 450文字
指差す先は、ミサイル基地だ。早い話が、大学院を辞めて軍に入るということだ。それは、岬さんへの想いを駆り立てるのに十分な事情だ。
僕は、手を差し出した。
握手を交わしたときは、もとの向坂さんに戻っていた。おかげで、僕も秘密を話しやすくなった。
死ぬか分からない、という言葉は、呑み込んだ。実際に、向き合ったことだ。その恐怖は、身体の奥底に染み付いている。
だが、向坂さんの言うことは、それとはちょっと違っていた。
男の目から見ても、向坂さんは格好良かった。この一言で、岬さんが惚れてしまっても仕方がない。
だから、ちらっと顔を眺めてみた。
恥ずかしそうに、うつむいている。向坂さんとの勝負は明らかに、僕の負けだった。