放課後の図書館で
文字数 408文字
僕の実家では、第一次世界大戦が終わる頃まで狐が人を化かしていた。
でも、彼女からこの一言を聞いた時は、大正、昭和と来て現年号がそろそろ終わろうとしている今現在になっても、まだ僕は化かされているんだと思いたかった。
放課後遅くに、そろそろ終わろうとしている春の日が窓から低く差し込んでいたが、そんな時間にはまだ早い気もする。
自分でも、気のない返事だと思う。当然の成り行きだったからかもしれない。
夕暮れのぼんやりとした光の中、彼女は大きな長机の向こうに、ブレザーの制服姿で端正に座っている。その様は、まるで一枚の肖像画のようだ。
高校の図書館は、もう閉まろうかという気配を見せてガランとしていた。司書のオバサンお姉さんがせかせかと歩き回っている。
それを横目に見ながらの切なる祈りは所詮、願望にすぎない。