タイムアップは目前に
文字数 459文字
今は実家にいるはずだ。ノロノロ走る車の中と窓の外を眺め渡してみたけど、それらしい様子はない。服の中から出した絵馬を眺めてみたけど、何も書いてなかった。狐ネットワークもお手上げなのだ。
気を取り直そうとするかのように、向坂が明るく気さくに話しかけてきた。
とりあえず、そう答えたのが墓穴だった。
身体が強張ったけど、思い切って口を開いた。
そう言うなり、向坂は車を渋滞した道の路肩に止めた。割りこまれた後ろの車が、けたたましくクラクションを鳴らす。
向坂の顔をみると、僕を小馬鹿にした様子はない。むしろ、まっすぐ前を真剣に見つめている。
窓の外を見ると、向坂に拾われた場所だった。
僕は言われるままに車を降りた。時間が惜しかったのだ。