婚約者の告白
文字数 418文字
さて、そんなある日のことだ。
杵築家の蔵の虫干しを手伝うことになった僕たちは、古い書物だの写真だのをひっくり返して整理することになった。
女性が遠慮がちに語りはじめるこの手の話は、ろくでもない秘密であることが多い。
僕は少々、怯えた。埃っぽい蔵の中に、壁の一角に開いた窓から差し込んでいた光が、一瞬だけ陰った。
僕も男だから、頭の中によからぬ妄想が暗雲となって立ち込める。一見、穢れを知らぬ少女のような岬さんが、年上の男に思いのまま嬲られる光景が頭の中をよぎった。
僕はぶんぶん頭を振って、その妄想を頭の中から追い払った。
僕を見つめるまなざしは、子どものように清らかだ。まるで……。