身に覚えのない疑惑
文字数 463文字
僕を見下ろす形になったヨウコは、ゆったりとした、しかし厳しい口調で尋ねた。
思いもよらないことだ。去年の高校生活の半分を、誰とも話さないで過ごしてきたのが僕だ。年末年始も実家に帰らず、一緒に年越しそばと餅を食べてじゃれ合いながら暮らしてきたヨウコとの間で、隠し事は何の意味もない。
あり得ない。岬さんのほかに女性がいたとしたら、恋に悩みながら艱難辛苦の生活を送ることもなかったのだ。
ヨウコと共に、半年間もの間……。
なんにせよ、ここでやるべきことは1つしかない。僕の実家へ連れていくより他に、岬さんの願いを叶える方法はないのだ。
それで済むことだった。ヨウコと狐たちが探してくれた手掛かりが何だか知らないが、僕の予定さえ空いていれば、岬さんが大学院生の向坂とどれだけ忙しい日々を過ごそうと関係ない。
当然の心配だった。いや、ヨウコがそこまで気にかけてくれていることが、今はうれしかった。もちろん、恋のために人生を棒に振る気はない。