僕が「妹」に勝てない理由
文字数 447文字
ヨウコが声を真似てみせるのは、そのことを思い出したからだろう。
別の客に対応してレジに立っていた僕は、思わず金額を打ち間違えていた。大慌てで訂正しようとしたが、岬さんが見ていると思うと、そのミス自体が恥ずかしかった。うろたえればうろたえるほどキーを打ち間違え、僕はすっかりパニックに陥ってしまった。
その時だった。
レジの機械がレシートを巻き込んで逆転を始めたのは……。
ヨウコの言い訳を一蹴してとどめの一言を放ったころには、レジの故障の責任をとらされてクビになったバイト先は、車道のはるか後方に飛び過ぎている。
恨みたっぷりに返された開き直りの一言に、僕は掌を返すように下手に出るしかない。ヨウコの助けがなければ、僕は岬さんにとって足手まといでしかないのだった。
だいたい、そうやって手を貸してくれるのは、この娘が意外と義理堅いからだ。