岬さんの決断
文字数 417文字
だが、僕を叩き起こしたのは、スマホからのコール音だった。
今までメールでしかやりとりがなかったのだ。僕に、携帯番号を聞き出す勇気も教える度胸もなかったからに過ぎないが。
大した瞬間記憶だった。こっそり、スマホに打ち込んでない限り。
似たような問いだったけど、これは本当に用件を聞いたのだ。わざわざ電話をかけてこなければならない用事といえば、ひとつしか思い浮かばなかった。
言葉が出なかった。まさか、こんなに早く決断するとは……いや、そうじゃない。たぶん、岬さんも一晩中悩んだのだ。
すぐ後ろで、くぐもった声がした。
振り向いた先では、布団にくるまったヨウコが、顔半分だけ出してこっちを見ている。スマホからは、怪訝そうな声が聞こえた。