フラれるための男の責任

文字数 434文字

何で行くんだお前は! そんな危ない所に!
 その後がひと悶着で、親父と大喧嘩になった。
心配なんだよ、学校が!
 嘘だった。本当は、岬さんが心配だったのだ。
(もし、あの通話の中断が事故のせいだったら?)
 今朝早く、日本の同盟国に向かって発射された弾道ミサイルを迎撃しようとしたミサイルの一部が飛ばずにそのまま地上に落下した。爆発事故が起こって、周辺が吹っ飛んだらしい。その近辺には住宅なんかないけど、記念公園のある辺りは、どうやら被災範囲に引っかかっているみたいなのだ。
(僕が向坂の告白を断らせなければ、こんなことには……。いや、もしかすると事故には……。それなら、まだ止められる! 岬さんを!)
 日が暮れるまでに向こうに着いて、岬さんの安否を確かめるのだ。電話はあれっきり、もう通じない。直に会って、向坂さんの告白を断っちゃダメだと説得するのだ。
(そう、僕はよき友人……それで充分)
 ただし、両親が僕を家から出すわけがない。
明日でいいでしょ!
それじゃあ間に合わないんだよ!
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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