身を捨ててこそ……
文字数 445文字
走りながらということもあって、車のぎっちり詰まったトンネルの中では、考えるのも煩わしかった。
その向こうで、公道の上に架かったバイパスの高架橋から下を見ると、トレーラーやダンプカーといった軍の車両がものすごいスピードで行き来している。飛び乗れるものなら、飛び乗りたかった。
そんなことを考えたのは、ある確信があったからだった。
高架橋の端によじ登って、軍の車両が来るタイミングを待つ。失敗して事故っても、死ぬことだけはない。
なぜなら、ヨウコとの契約はこうなっていたからだ。
僕の心はもう、ヨウコに移っている。岬さんのもとへ急いでいるのは、言ったことへの責任を果たすためだ。
死んでしまったら、向坂の告白を断れという言葉を取り消せなくなる。タイムリミットは、今日の日没だ。