「妹」の弱点

文字数 494文字

お食事するなら! 

お~お~き~な~す~いしゃ~の……めんめん亭!

 店内コマーシャルも賑やかに……。

 そんなわけで、僕は店の入り口で大きな水車が回る、大手うどんチェーンの支店でバイトをしている。結構流行っていて、注文取りもレジも皿洗いも、目が回るくらい忙しい。

いかん……最終ラウンドまでスタミナもたん……。
オラオラ若いの、交代だぞ! メシ食え!
待ってました……!
 それでもなんとか体力が持つのは、バイト入りの前にお替り自由の「まかない」が振る舞われるからだ。

 巨大な飯櫃に山盛りの、揚げ醤油ご飯。

 要は、細かく刻んだ油揚げを混ぜ込んだメシを丼に盛って、ネギを薬味に醤油をかけて食うだけの話だ。

か~っっっ! この1杯のために生きてるな~!
 だが、これがめっぽう美味かったりする。
米がいいのか、炊き方がいいのか……。
(いや、この街中で水っていうことはないだろう、僕の田舎ならともかく……)
たぶん、油揚げだ。この、油揚げに、秘密があるんだ、ろう!
(でも、チェーン店で使うようなのなんて、大量生産の安いやつのはずなんだけど……まあ、考えたって仕方がないか、そんなことは)
 問題は、僕よりもヨウコだ。
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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