彼女の実家でも……。
文字数 411文字
そんな力を持った家系なら、祖父がニューギニアの激戦地から生還できたのも頷ける。彼は、無意識のうちに妖狐の力を使っていたのだ。
そして彼は杵築家から由良家へと婿養子に入り、高度成長期に都市圏へ出てひとりの娘を設け、夫を迎えて岬さんが生まれた。
もし、あの町の地下で、忘れられた戦争が牙を剥かなかったら、僕はどんなに美しい義母を持つことになっただろうか。その妖狐の力は、現代の災いを避けられないものだったのか、それとも娘に引き継がれて終わりだったのか、それは僕にも見当がつかない。
せっせと顔を拭く岬さんの仕草は、寝起きのヨウコによく似ていた。
ヨウコは1000年生きて、狐龍になることはできなかった。でも、こんな形で、僕のすぐそばで生きている。
だって、こうは考えられないだろうか。
彼女の実家でも、第二次世界大戦が終わる頃まで狐が人を化かしていた。