最後の決断
文字数 436文字
どのくらい、そうしていただろうか。ヨウコのほうは、どう思っていたか分からないが。
考えたくなかった。残される両親のことも、岬さんのことも、最後の最後までは頭の隅に追いやっていたかった。
だが、岬さんだけは僕の意識のど真ん中に自力で現れたのだった。
スマホが急に鳴っても、僕は取る気がなかった。勝手に取って出たのは、ヨウコだった。
はすっぱな日ごろの物言いからは信じられないほどのしとやかな声に、岬さんも親し気に応じる。
昔からの知り合いのように言葉が交わされた後、スマホは僕に手渡された。
努めて冷静に尋ねたのは、本当の気持ちがもう、岬さんに向いてはいないということが分かったからだ。
向坂の告白を断った後、僕が死んだりしたら、どれだけ深い悲しみが襲ってくることだろうか。