道はいつまでも真っすぐじゃない

文字数 479文字

……そういえば、あったよな、あそこに。
 最初は、マラソン大会にでも出たように、道なりに走っていればよかった。だけど、街を分断して流れる大きな川が見えてくると、そうはいかない。
泳ぐわけにもいかないしな……どこだよ、橋!
 堤防沿いを走っていると、滔々とした川の流れは穏やかに見える。だが、その流れは見かけより速く、水面下は複雑な流れの渦が荒れ狂っているという。実際、川の怖さを知らない他所の人が、ここで毎年1人は溺れて死んでいるのだ。
死んでたまるか……岬さんに会うまでは!
 自分からフラれに行くというのに、やらなくちゃいけないことは命懸けである。割に合わないといえば、これ以上のことはないだろう。
この橋を渡れば……!
 心臓がバクバクいうのを感じながら、誰もいない欄干際の歩道を、力の限り走る。間に壁を挟んだ対向2車線ずつの橋は、車がぎっしりと詰まって渋滞していた。
(そりゃ……そうだよな)
 この先が、ややこしいのだ。

 なにぶん、川沿いの山にトンネルを幾つも強引に掘って、その麓にある公道とつなげているものだから、その道のりは立体迷路並みに入り組んでいるのである。

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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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