道はいつまでも真っすぐじゃない
文字数 479文字
最初は、マラソン大会にでも出たように、道なりに走っていればよかった。だけど、街を分断して流れる大きな川が見えてくると、そうはいかない。
堤防沿いを走っていると、滔々とした川の流れは穏やかに見える。だが、その流れは見かけより速く、水面下は複雑な流れの渦が荒れ狂っているという。実際、川の怖さを知らない他所の人が、ここで毎年1人は溺れて死んでいるのだ。
自分からフラれに行くというのに、やらなくちゃいけないことは命懸けである。割に合わないといえば、これ以上のことはないだろう。
心臓がバクバクいうのを感じながら、誰もいない欄干際の歩道を、力の限り走る。間に壁を挟んだ対向2車線ずつの橋は、車がぎっしりと詰まって渋滞していた。
この先が、ややこしいのだ。
なにぶん、川沿いの山にトンネルを幾つも強引に掘って、その麓にある公道とつなげているものだから、その道のりは立体迷路並みに入り組んでいるのである。