種明かし
文字数 399文字
思い出すのがつらくて、僕は話をはぐらかした。
怖い目で睨まれるのは、酒が飲める年になって、僕もそういうことがちょくちょくあったからだ。たまに、岬さんにも呆れられたことがある。
藪蛇になりそうなので、僕は再び蔵と杵築家の歴史の整理に取り掛かった。
岬さんが合いの手を入れながら、古い書物の箱を空けた。糸で綴じられた、分厚い本が何冊も埃をかぶっている。しなやかな指が、その中の一冊を手に取って開いた。