最後の勝負に出るために
文字数 540文字
近代に入ってもそんな話が平気で語られていた田舎に岬さんを連れていくまで、1週間とちょっとが残されていた。それは、僕とヨウコが周到な準備を積み重ねるには、充分な時間だった。
その上で、日曜の1日で必要なことを調べ尽くすのに必要だったのは、何についての情報が欠けているのか、最後の平日となった金曜日までに確かめることだった。
いつもはうるさいヨウコも、僕の正念場だということを弁えてか、おとなしく隣の席に座っている。
岬さんの話によれば、由良家は母方の姓で、戦後の高度成長期にこっちへ出てきたらしい。その祖父は、婿養子だ。つまり、2代にわたって婿取りの家系だったわけだ。
因みに僕の親父は前近代的に頭が固くて、「小糠三合あったら婿に行くな」を信条としている面倒臭い男だ。だから何だと言われても困るが。