Ⅶ. the sprouting love ♯33

文字数 469文字

「え……?」

 ――今、なんて言ったの?

「なん、だって……?」

 浅桜くんも困惑の表情を浮かべている。

 前触れもなく突然で、まるで現実味のない言葉。吸血鬼なんて存在するわけがない。そんなの物語の中だけだ。紛れもない作り話だ。

「俺は人の命を食らって生きる化け物だ。そして……」

 声が出せない。むしろ言葉が見つからない。周りの空気が刃物の様に張り詰めていて、少しでも動くと身体中傷だらけになってしまいそうだ。

「十二月二十四日、ここで五人を殺したのは……俺だ」

 ……どういうこと? 一体なにを言っているの? ルカさんはわたしを助けてくれたのに、そんなことするはずないじゃない。吸血鬼? そんなのまたわたしを揶揄(からか)おうとしているに決まっている。

 全てが凍てついてしまったような静寂に、息が詰まって悪寒が走る。

 事件の翌日、結花さんに車で送ってもらったあの夜、ルカさんは事件の事は知らないし答えられないと言った。ルカさんが纏う安心感に包まれたとき、この人は嘘をついていないって確信があった。だからこれは全部嘘だ。今ルカさんが話していることが全部嘘なんだ。

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