Ⅱ. whereabouts of blood ♯11

文字数 621文字

 寝ころんだまま浅桜くんとのメッセージをスクロールしていく。

 画面の中に広がる沢山の他愛ないやりとり。
 上へ上へと遡っていくと、今日映画に誘ってくれたメッセージへと辿り着いた。

『それなら、今度ふたりで観にいかない?』

 この直前にはどんな映画が好きかをふたりで話していた。
 わたしは恋愛映画、浅桜くんはホラーやSFが好きって言ってたっけ。

 そのときわたしがホラーは苦手だって話したら、丁度今コメディタッチで怖くないゾンビ映画がやってるからって、それで誘ってくれたんだ。

 その意外なチョイスがかわいくて、それから誘ってもらえたことが嬉しくて、誰かに聞いてほしくなってすぐに瑞花に電話をかけた。

 行きたかった。ふたりで映画を観たかった。ランチを食べて、肩を並べてお店をまわって、疲れたらカフェで休憩して……。

 たくさん言葉を交わしただろう。浅桜くんはどんなふうに笑ってくれたかな?

 想像すると鼻の奥がツンとしてきて、やっぱりまた涙が滲む。

 しかもクリスマスにって言ってくれたのは浅桜くんからだったのに。

『ありがとう。楽しみにしてたのにほんとに残念。また連絡するね』

 ずっと憧れて恋焦がれて、ようやく仲良くなれたのに、これで終わりなのかな。このままなにごともなく三学期を迎えるなんて、そんなの悲しすぎる。

 けれどわたしからドタキャンしたくせに、そう都合よく次の約束なんて切り出せない。

 それに今は昨夜の事件が気になり過ぎて、思考がうまくまとまらない。

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