Ⅶ. the sprouting love ♯13

文字数 395文字

 バレンタイン当日も物憂げな色の雲が空を覆っていた。だけど、わたしの心はリズムに乗った雨音のように弾んでいる。

 恋愛経験のないわたしでも、さすがに薄々勘づき始めていた。最近のわたしと浅桜くんの距離からは、ただの友達以上のものが感じられる。だからといって告白する勇気はまだないけれど。

 昨日作ったオペラを浅桜くんはどんな顔で受け取ってくれるのだろう。もしかしてわたしからのバレンタインチョコを期待してくれているかもしれない。そう考えるのは自意識過剰だろうか。

 だけど、上向いた気持ちはポジティブ思考をさらに加速させる。

 ルカさんとも会えるのは決まって天気が悪い日、もしくは夜と決まっている。ジンクスめいた考え方かもしれないけれど、聖バレンタインデーなのだから今日こそは、という謎の奇跡を期待する気持ちが一方的に膨らんでいた。

 高揚する気分に反して体は少しだるいけれど、まあ大した問題じゃない。

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