Ⅱ. whereabouts of blood ♯32

文字数 401文字

 結局今日の夕食もあまり味がわからなかった。

 それでも瑞花のお母さんや結花さんともたくさん話せたし、笑い声が飛び交う中楽しく食事ができたことはうれしい。

「緋莉ちゃん、そろそろ送ってあげるね」

 食後のコーヒーを飲み終えた結花さんが立ち上がり、車のキーを取りに自室へと戻っていく。

 わたしも瑞花の部屋からコートを取ってきてリビングに戻ると、瑞花が「おみやげだよ」と言って、容器に移し替えたシフォンケーキを手渡してくれた。

「ありがとう。お母さんケーキ大好きだから、きっと喜ぶよ」

 包みを受け取ると、結花さんが人差し指で車のキーをくるくるとまわしながら戻ってきた。

「緋莉ちゃん、またおいでね。夜凛子(よりこ)さんにもよろしく伝えて」

 エプロン姿の瑞花のお母さんも、玄関まで見送りに来てくれる。夜凛子とはお母さんの名前だ。

 瑞花に「またね」と告げて瑞保のお母さんに小さく頭を下げると、わたしは結花さんと宵月家をあとにした。

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