Ⅴ. instinct was calling ♯1

文字数 482文字

 元旦当日。
 目を覚ますとローテーブルに置いていたバラの異変に気がついた。枯れたように葉がしおれ、花びらもすべて散ってしまっている。

 気温のせいだろうか。でも、わたしはいつも夜通し暖房をつけている。

 花びらを拾い集めてリビングへ向かい、残りのバラを確認してみたが、こちらは元気に咲いたままだった。一体なにがいけなかったのだろう。

 釈然としないままサニタリールームへ行き、歯を磨いて顔を洗った。

 お母さんの姿が見えないけれど、まだ眠っているのだろうか。もう八時過ぎなのに珍しい。普段は休日でも朝早くから起きて、コーヒーを飲みながら本を読んでいるのに。年末も自宅と研究室を慌ただしく往復していたから、疲れが溜まっているのかもしれない。

 お母さんがいつ起きてきてもいいようにわたしも今朝はコーヒーにしてみようかと考えたけれど、ロースターにセットする豆の分量がいまいち分からない。コーヒーは諦めて、代わりにハーブティーを作ることにした。

 ハーブは庭の一角に植えられているもので、ほぼ年中収穫できる。放っておくと庭がハーブだらけになるので、育っては摘まれてを繰り返している。

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