Ⅶ. the sprouting love ♯34

文字数 658文字

 この国では人を三人以上殺すと死刑がほぼ確定すると聞いたことがある。人を次々と殺すというのはそれくらい罪が重いということだ。嘘だと信じているのに、そんなことを今思い出してしまう。

「な、なに言ってるの? そんなの、きっと……全部嘘だよ」

 浅桜くんに変な疑いを持ってほしくなくて、声を震わせてなんとか言葉を紡ぐ。

「……真実だ。この街で起きた殺人事件は、すべて俺の仕業だ」

「嘘だよ! だってルカさん、クリスマスイブの事件についてはなにも知らないって言ってたじゃない!」

 思わず声を張り上げた。

 もういやだ。浅桜くんに紅い瞳を見られ、蓮崎くんはわたしを指差して化け物と言い放ち、信頼していたルカさんは自分を吸血鬼で連続殺人の犯人だと口にする。

 なぜ……どうしてこんなことになっているんだろう? 世界がわたしから遠ざかっていくような、得体の知れない恐怖だけが黒く大きく膨張していく。

「あの日、あんたは俺が奴らを殺したショックで気を失った。その事実を利用して、俺は『知らない』と嘘をついた」

 確かに意識はなかった。だから住所を確認するために学生証を勝手に見たと聞いて怒った覚えもある。でもわたしにはルカさんが目の前で人を殺した記憶なんてないし、だとしたら今ルカさんが話していることが嘘の可能性だってあるはずだ。

「立華、あいつとなにがあったかは知らないけれど、今は蓮崎を病院に連れていくのが先だ」

 そう言われてはっとする。確かにそれが先決だ。

「そう……だね。うん……わかった」

 だけど、果たして蓮崎くんは生きているのだろうか……。

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