Ⅰ. in the darkness ♯7

文字数 580文字

 この町が唯一誇れるであろうこの大きな緑地公園は、中央の池を囲むようにして東西南北に入口があり、池の周りの遊歩道から各施設へと繋がっている。

 敷地内にはカフェやテニスコート、それにバーベキュースペースにイベントスペースも併設していて、昼間は多くの人がレジャーや憩いの場として利用している。

 かじかむ手に息を吹きかけながら北側の入口から中へ入ると、すぐに大きな池が見えてきた。

 十字に架かった長い橋を渡ることもできるけれど、さすがに目立つので東側の広い遊歩道を進む。

 右手に池を見ながら月明りと外灯を頼りにしばらく歩いていると、バラの甘い香りが徐々に鼻腔をくすぐり始める。この緑地公園の見所でもあるバラ園からだ。

 公園東側の大半を占めるこのバラ園は冬バラも多く栽培されていて、色とりどりのバラを一年中楽しむことができる。

 バラ園を横目にさらに進み、やがて自動販売機の灯りが見えてくると、突然男性の大きな笑い声が辺りに響き渡り、思わず体がびくっと震えた。

 どうしてこんな所に人が集まっているのだろう。
 でもまだそんなに遅い時間じゃないし、大丈夫だよね。

 気配を消すようにしてなるべく静かに歩く。

 暗くてよく見えないけれど、体格もよく、そのシルエットだけで怪しくて怖い人達だと脳が認識し身構えてしまう。


 ――ピコン。


 その時、ポケットの中で再びスマホが音を鳴らした。

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