Ⅳ. a snowy day ♯19

文字数 544文字

「はじめまして、ルカさん。緋莉を助けてくれてありがとうございました。わたしは宵月瑞花。こっちは彼氏の皆渡蘭雅です」

 丁寧に頭を下げる瑞花。それに倣うように皆渡くんが「どもっ」と短く挨拶をして続けた。

「あんたハーフなのか? 肌白いし、髪は銀色だし、それに目も少し紅い」

 皆渡くんの言う通り、ルカさんの髪は染めているわけではなさそうだし、紅い瞳もカラコンではないくらい自然だ。だとしたら外国人か、あるいはハーフなのかもしれないなとわたしも以前から考えていた。

「詳しい血筋は分からない。少なくとも十二ヶ国以上の混血だそうだ」

 それを聞いて納得した。だからこの人はひとりで人種や国境、さらには性別まで越えているように見えるんだ。

 言い方を変えれば、どこか人間離れしている。わたしもたまにハーフみたいだと言われることはあるけれど、お父さんの名は晄でお母さんは夜凛子だし、歴とした日本人だ。

「どこから来られたんですか?」

 と、瑞花が質問を重ねた。

「トランシルヴァニアだ」

 耳慣れない地名を返された瑞花が、「へえ……」と語尾に疑問符を付けたようなトーンで声を漏らす。おそらく頭の中で場所を検索しているのだろう。

 わたしも詳しくは知らないけれど、北欧だったか東欧だったか、とにかくヨーロッパだったはずだ。

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