Ⅵ.『Vampire’s love』 ♯31

文字数 528文字

「大丈夫かい? 気分が悪いなら、なにか他のものを出そうか?」

 浅桜くんのお父さんからも心配そうな顔を向けられて、思わず無理に笑ってみせる。

「いえ、大丈夫です。もう収まりましたから。改めていただきます」

 そう言うとスプーンを手にして、お肉を一切れ乗せたライスをそのまま口に運んだ。

 ――っ!

 その瞬間、頭を突き抜けるような痛みが襲った。

 なに、これ? アレルギー? わたしそんなのなかったはずだけど。

 こめかみ辺りからズキズキと響くような痛みが走る。でも耐えられないほどじゃない。みんなの前で、変な仕草は見せられない。

 息を止めて、あまり噛まずに無理矢理喉の奥に流し込むと、「おいしいです」と笑ってみせた。

 実際、切り口が赤いレアなお肉はとてもおいしかった。けれど、頭に響くほど鼻をつくのはガーリックの匂いだ。

 どうしてだろう? 確かに家ではあまりガーリックは使わないけれど、苦手だったわけではない。お父さんが苦手だったとは聞いているけれど、わたしは今まで平気で口にしていたはずだ。気づかなかっただけで、実は苦手だったのだろうか?

 かといって完全に受け付けないわけじゃない。気づかれないように水とスープを何度も喉に流し込み、なんとかステーキライスを完食した。

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