Ⅸ. Lies go with the dawn of winter ♯3

文字数 541文字

 そうだ……。

 わたしは……優陽が欲しい。

 愛する人の……血が欲しい!

「ルカさん! 助けて!」

 思わず声を張り上げる。わたしは優陽ではなくルカさんに助けを求めた。それが優陽にとってどれだけ悲しいことかを理解していながら。

「緋莉! 一体どうしたんだ? あいつになにかされたのか?」

「違う、違うの! でもわかるの! 今わたしを止められるのはルカさんしかいないって! お願い、優陽。手を離して! でないとわたし、あなたを……っ!」

「おいルカ! あんたはこの国に娘を探しに来たんじゃないのか! どうして緋莉にこんなことするんだ!」

 今にも途切れそうな意識の中、ルカさんが近づいてくるのが見えた。次の瞬間、ルカさんが手をかざすと、そこから霧が溢れ出し優陽にまとわりついていく。

「ルカさん、やめて! 優陽には手を出さないで!」

「くそ、離せ!」

 優陽は苦しそうに手足を動かしている。信じ難いけれど、霧に縛られて体の自由を奪われているらしい。

「君の言うとおり、俺が探していたのは自分の娘だ。だけど、俺にはもう一つ探し物があるんだ」

 そう言いながらルカさんがわたしの前まで来ると、右手でわたしの顎を掴む。

「緋莉、すぐ楽にしてやる」

「や……めろ……ルカ」

 優陽が手を伸ばす。その手をまた霧が縛りあげた。

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