Ⅴ. instinct was calling ♯9

文字数 501文字

「そういえば話変わるけどさ、年末に偶然会ったときふたりともお花持ってたよね? あれってなんだったの?」

「あぁ、あれはルカさんがバラを買ってたところにたまたまわたしが出会(でくわ)したの。それで四本だけもらっちゃった。でもバラなんか抱えてどこに行くんだろうと思って訊いてみたんだけど、それも教えてくれなかったんだよね」

 それを聞いた瑞花がいやらしく笑う。

「実は彼女とかいたりして」

 やっぱりそう考えるのが普通だ。でもクリスマスならまだ分かるけど、年末にバラの花束ってどうなの? まあいずれにしても……、

「知らない。わたしには関係ないし!」

 思わずきつい声がでた。

「それもそうだね。で、普段はなにをしてる人なの?」

「それも知らない」

「なんにもわかんないじゃん!」

「きっと秘密主義なんだよ。あの人」

「ていうか、緋莉からは訊いてないんでしょ?」

「だって、訊きにくいんだもん」

 瑞花がほらね、と言って両手をあげる。

 言われてみれば、わたしはルカさんに年齢以外の質問はしていない。

 でもそれは照れくさいとかそんな単純な気持ちじゃない。

 あの人が時折見せる哀しそうな顔。それを思い出すと、なぜか触れてはいけない気がするからだ。

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