Ⅸ. Lies go with the dawn of winter ♯14
文字数 576文字
「あきらさんっ!」
――この声、まさかっ!
「お母さん!」
振り返ると、息を切らせたお母さんが立っていた。
「お父さんっ! お母さんだよ! ねえ、お父さん! お父さん!」
必死で声を張り上げる。お父さんの名前はあきら。
日の光と書いて晄。
わたし達は家族だ。たとえ呪われた血で繋がれていようとも、その絆が消えることはない。
ほんとはずっと寂しかった。当たり前に家族が揃っている友達を羨ましく思っていた。
忘れてしまうほど遠く憧れて、心の奥に閉じ込めて鍵をかけたまま、ずっと諦めて生きてきた。
だけどお父さんにまた会えた。孤独の中で人を殺める罪を背負って、わたしのために生きていてくれたお父さん。そして、待ち焦がれていた瞬間がようやく訪れた。
「お父さん……来てくれて、わたしを助けてくれて、ありがとう!」
わたしは声の限り叫んだ。そしてお母さんが駆け寄ってくる。お父さんの表情はもうわからないけれど、薄く唇の端が持ち上がったような気がした。だけどお母さんがお父さんのそばに着いた瞬間、その姿がふっと雪のような小さくて淡い光を残して消えた。
お母さんがその光に手を伸ばし、優しく手のひらで包み込む。
「……晄さん、わたしはこれからも、緋莉と共に生きていきます。だから……どうか安らかに」
凛とした眼差しで涙を流しているお母さんは、とても強く、そして眩しく見えた。