Ⅶ. the sprouting love ♯43

文字数 647文字


 それから浅桜くんは緑地公園に近づかないよう大回りして、わたしを家まで送ってくれた。

「仮の話だけど、もしルカがほんとに吸血鬼だとしたらきっと昼間は現れないってことだろう。立華の話でもルカと会ったのは夜か雪の日。つまり日差しが遮られているときだ。まさかこんな住宅街で接触してくるとも思えないけど、戸締りはちゃんと確認しなよ」

「うん、送ってくれてありがとう。浅桜くんも気をつけて帰ってね」

 門の前でそう伝えると、浅桜くんは照れくさそうに頭を掻いて、すっと右手を差し出してくる。

「ん……? あぁ、はい」

 握手かな? わたしも右手を差し出して浅桜くんと握手を交わす。

「違うって! 今日なんの日だった?」

 そう言われてはっとする。

「あ……バレンタイン」

 そういえば、オペラはどこにあるんだろう。

「宵月が包装し直してくれたんだ。立華の鞄に入れてあるってさ」

 言われて鞄を確認すると、わたしがラッピングしたのとは別の包みが入っている。

「でもこれ、本城先輩に踏まれて潰れてるかもしれないし……」

「それくらい平気だよ。オペラ、だっけ? 宵月も手間がかかって大変だったって言ってたし、せっかくなら欲しいんだけど」

「で、でも……」

 ほんとうにいいのだろうか? 人が踏みつけた物なのに。

「もしかして、俺のじゃなかった?」

「違うよ! 浅桜くんに食べてほしくて作ったんだよ!」

 思わず大きな声をあげる。すると、浅桜くんはわたしが包みを抱えている腕を強引に引き寄せてオペラを手にすると、わたしをぐいっとその胸元に包み込んだ。

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