Last chapter. addicted to you ♯2

文字数 389文字


 そしてバラ園に差し掛かると、優陽が立ち止まり、鞄の中に手を入れてなにかを探し始めた。

 なにも聞かずにわたしは近くにあった桜の木を見上げる。

「あのさ、緋莉」

「ん?」

 振り向くと、一陣の強い春の風が吹き抜けた。

 宙を舞う桜の花びらに巻かれ、わたしは思わず目を閉じる。

「これ、クリスマスに渡せなかったプレゼント」

 目を開けると、そこに優陽の右手が差し出されていた。手のひらに乗っているのは、リボンがついた縦長の小箱。

「あ、ありがとう」

 なんとなく予感はあった。だから――。

「実はわたしも今日、あのときのプレゼント持ってきてて……」

 わたしも鞄から包みを取り出すと、優陽がくすりと微笑って言う。

「ルカさんの誕生日って聞いたからさ。今日ここで渡そうって決めてたんだ」

 お母さんだけでなく、居なくなったお父さんのことまで気にかけてくれるなんて……この人を好きになって、ほんとうによかった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み